在庫証明書について
外部の倉庫に在庫資産を預けている場合に、期末の在庫量について預けている側が自分で倉庫を訪問して在庫数量を数えることはせず、預け先に在庫数量の証明書の発行を依頼することがある。
「在庫証明書」などの名前で呼ばれているが、この根拠について調べてみた。
倉庫業者と寄託者の間の寄託契約に在庫証明書についての取り決めがあればそれが根拠になってくるが、その取り決めがない場合は法令では
商法>商慣習>民法
の順で適用されるのでこのどこかに在庫証明書について規定されていると考えた。
まず商法では、9章に寄託や倉庫営業について規定されている。
595条に善管注意義務が、610条に倉庫営業者の責任(立証責任は倉庫業者側にある)の規定があるため、寄託物に何かがあったときに倉庫業者側が立証できるように保管数量について記録を残すなどしているものと思われる。
ただし、在庫証明書の発行についての規定はない。
次は商慣習の順番だが、商慣習は調べる範囲が広そうなので、先に民法を見てみる。
民法の2章の11節に寄託契約についての規定があるが、ここにも在庫証明書の規定はない。
では商慣習を見てみる。
国土交通省で、標準倉庫寄託約款なるものを出している。
この標準倉庫寄託約款は、国土交通省で標準的なケースを想定して、約款を作成している。
その38条に倉庫業者の故意・重過失によって生じた損害の賠償の規定があるが(立証責任は寄託者側で作られている)、倉庫業者側も否認できるように保管数量の記録を残すなどすると思われる。
ただし、ここにも在庫証明書についての規定はない。
ほかに商慣習的なところで調べてみると、一社)日本冷蔵倉庫協会から「在庫証明書の発行指針」が出されていたので、ご参考されたい。
まとめると、在庫証明書の発行は
(契約に含めている場合)
- 書かれている場合はその義務の履行
(契約に含めていない場合)
- 商慣習的に対応しているもので、発行するかどうかは倉庫業者の任意
となる。